10月です。空が突き抜けるように高く澄んでいます。実りの秋、行楽の秋。春や夏と違って秋の訪れにはしみじみとした味わいがあります。読書の秋とも言われる所以でもあります。本格的な秋の訪れを実感する10月1日、いきなり冬の訪れを告げるような木枯らしが襲いました。介護保険の改定による「居住費、食費の自己負担拡大」という冷たい突風です。▼改定にあたって、自宅で介護を受ける人は自己負担なのに、入所すると介護給付が受けられるのは公平を欠く・・・。だいたい不摂生を重ねたのは自分の責任、それで介護保険を受けるのは虫が良すぎる。こんな世論操作がふりまかれました。自己負担を重くして、保険財政の支出を抑えることを目的にしている勢力の側から出された情報操作です。単純に「良い」「悪い」を示されれば、良い方を選ぶのは当然です。公務員をムダ、民間を善と二分化し、その選択を国民にせまり大成功した総理大臣もいます。▼介護の問題は、人間の尊厳にかかわるもので単純に二分化できるものではありません。出生も人生も様々。運、不運もいろいろです。社会は個の尊厳を守り、支え合うことで成り立っています。支え合いの社会は人間が長い歴史の中で築き上げてきたものです。最近とみに行政の側から、自立、自助、自己責任が国民に求められています。言葉は当然のことを示していますが、その背景には弱者切り捨ての施策が潜んでいます。▼秋の空は深い。人間は遠くを見ると思考も深まります。単純な色分けの向こうに真実が姿を現してきます。
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