連載 子どもと向き合う
最終回 安心して「今日は休みます」と言えるといいな


 新学期がはじまり心はずむ春も、不登校・登校拒否の子どものにとっては、必ずしもそうではありません。むしろ「学校に行きたくても行けない自分」をあらためてつきつけられます。「不登校の子が学校にいるんですがどうしたらいいのでしょうか?」この冬ある学校の事務職員の方からこんな質問をいただきました。

 お母さんから「今日も学校を休みます」というお電話をいただくのだそうです。こんな場合、電話でどんな事を話したらいいのだろうかというお話でした。お母さんにとっては、わが子と学校とをつなぐ大事な1筋の糸のようなものかもしれません。こんな時、だれにでも当てはまる受け答えなどないように思います。

 むしろ、たった1本の電話であっても、このお母さんが安心して「今日はうちの子休みます。」と言えるような関係こそが大事だと思います。「そうですか。風邪が流行っていますから、お気をつけくださいね。」こんな言葉でも、ほっと安心してわが子をまた休ませられるかもしれません。しかし、この安心して学校を休めるということが案外今難しくなってきているようです。

 「学校から不登校の生徒を無くそう」という不登校ゼロ運動が行われたり、教室から不登校の生徒がでると担任の責任となって先生自身が学校でつらい立場に追いこまれたりという例が「親の会」などで話されます。

 最近さかんに行われているいろいろな学力テストで、不登校の生徒がいるとクラスや学校の平均点が下がってしまうのでこまるという声も一部から伝えられます。競争が子どもたちだけでなく社会のすみずみにまで浸透するうちに、本当につらくて、助けを求めなくてはいけないような時でも、無理をしても「元気」で「頑張る」ことだけがよいことであるかのようになってしまっているように思います。

 「不登校はずるいこと」「心が弱いから不登校になる」など誤解や無理解がまだ今の日本には広く存在します。どんな子にも「心が疲れたときはいつでも休んでいいんだよ」と私達自身がやさしく語りかけられるような地域や学校、日本であってほしいと願います。

 5回にわたり地域の子ども達の居場所から子どもと青年たちの事についてお伝えしてきました。こうした機会をご提供して下さいました保健生協の皆様と読者の皆様に感謝いたします。これからも地域で、子ども達と一緒に喜んだり怒ったり行動してゆきたいと思います。どうもありがとうございました。

(NPOゆうえふ代表  森光男:大田区大森西在住)

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