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森 光男さん |
次郎君は中学3年生。運動部に入っていて学校の成績は今まで大体「3」
ばかりの「中」くらい。そんな彼の1学期の通信簿にははじめて「2」が一つだけついてしまった!3年生になってからの成績は高校受験に大きく影響します。「2年の時の先生とぜんぜんつけ方が違う。こんどの先生はテストの点数が80点でもだめ。俺なんか前と同じようにちゃんと授業受けてたのに…。」
中学校の評価が「相対評価」から「絶対評価」に変わった昨年あたりから、授業のようすが変わってきました。勉強が「できる・できない」だけでなくて「ノートのとり方・提出の回数」「授業中の発言の回数」など日常の授業態度への点検が細かく厳しくなってきました。知りあいの先生は「エクセル(コンピューターソフト)が頭に入ってないと計算できないよ」とぼやくほど複雑な評価方法に変わってきました。子どもたちの「一生懸命さ」を先生がきちんとみてくれるのならまだいいのですが、中には「えこひいき」と疑われるような先生の言動があったりして、それが子どもたちを憤慨させます。「いつも決まった人しか指名しない」「気にいった子へは言葉づかいも違う」…以前はこうした不満は直接先生とのやり取りのなかで教育的に「解決」してきたのかもしれませんが、今の時代ははっきりそうした関係が「評価」として数字に反映されるようになってしまいました。
先生方も生徒から「きちんとやっているのにどうして僕はこの点数なんですか」という意見にきちんと答えるために一生懸命です。けれどもきちんと評価しようとすればするほど点検をきちんとし、子どもたちの管理を厳密にしなければならないという皮肉なことになってしまいます。
次郎君は思い切って先生に「先生どうして僕『2』なんですか」と聞いてみました。「先生が言ったようにやらないからだよ」というのがその時の返事だったそうです。この言葉に次郎君は今も納得できないでいます。
もっと子どものたち元気を引き出すような評価の仕方はないのでしょうか。今それを考えないと子どもたちはつぶされてしまいます。すぐにそうしたことができないならば、せめて私たち一人一人の身近なところから子どもたちの元気の芽を見つけて大事に育ててあげたいと思うのです。
「子どもはまちがいながら育つもの」「いっぱいまちがいながら大きくなろう」と子どもたちに呼びかけられるような学校や地域・家庭であったらと思います。
(NPO法人ゆうえふ代表 森光男)
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