虫歯と歯周病
大田歯科所長  後藤康仁

 歯科が好きな方はめったにいません。歯科治療の不快さや痛い記憶から歯科を避けている人も決して少なくは無いでしょう。この治療の不快さと手遅れ状態での治療開始が、歯科治療の困難さに拍車をかけています。確かに、私たち歯科に従事するものの努力不足も否めません。
 虫歯も歯周病も発病から進行が極めて緩慢であります。症状が出た時はすでにかなり進行しており、治療が難しく且つ治療後の経過も決して楽観できる物ばかりではありません。とにかく治療には多くの限界があるので最小の治療ですむような、そして出来れば治療をしないですむようにしてもらいたいと思っています。そのために歯や口の病気の成り立ちを理解していただき、日常の生活の中に生かせるように一人一人が考え工夫していただきたいと思います。

 

ストレスと関係している虫歯や歯周病

 物があふれ、物質的に豊かな時代になりましたが、精神的な豊かさについてはどうでしょうか。競争社会の中での働きすぎや、夜間勤務の職業の人々や、人間関係にまつわる悩みなど様々なストレスが現代人に付きまとっています。この過剰なストレスが身体に異常を起こさせる原因になっていることを、そして治療を難しくしている事を診療を通して感じてきました。
  近年、ストレスが病気を招く仕組みが明らかになってきました。自律神経と白血球の関係が明らかにされてきました。また、身体の不具合を自分の身体に備わっている治す力を利用することの大切さが注目されて来ました。ストレスを避けたり、上手に付き合うこと、そして薬に頼らない健康的な生活が大切にされなくてはなりません。こうした生活の見直しのもとで病気に対応していかなくては、健康は取り戻せないと思っています。
 虫歯や歯周病もストレスと関係してます。初期の虫歯の成り立ちに関しては、歯の表面で繰り広げられる事態の理解が欠かせません。

虫歯のメカニズム

  図1は、細菌の塊(左)が歯(右)の表面に着いている状態のものです。食後、歯の表面ではこの細菌によって酸が作られます。そしてその酸の強さによって歯の中のカルシウムやリンが歯から溶け出したり、あるいはそれらを唾液から取り込んだりしています。
 図2は食べた後の歯の表面の酸性の度合いが時間の経過と共にどのように変化するかを表したものです。すなわち、物を食べると歯の表面は急速に酸性に傾きます。その後、徐々に回復(中性)に向かいます。その回復には、食べ物の種類や唾液の性状や住み着いている細菌の種類や量は歯磨きに左右されます。又、酸性の濃度があるレベルを超えるとカルシウムが溶け出し、反対に中性に回復すると唾液からカルシウムが取り込まれます。この負の収支決算が虫歯です。
 図3は、食べる回数が多い場合の収支決算を図にしたものです図4は、寝る前の飲食の害を示したものです。
 お菓子や飲み物を飲みながら仕事や遊びをしている方、飴やチョコレートが好きな方、缶コーヒー清涼飲料水などが手放せない方、夜喉が渇きジュースなどを飲んでいる方など如何に危険な状態にあるか分かりますでしょうか。

歯茎の状態は健康のバロメーター

 次に歯周病についてですが、歯周病は、悪化すると歯茎からの出血や腫れや口臭、又は歯のぐらつきなどの自覚症状があらわれます。症状が出てからでは治療は困難です。歯周病は歯を支えている骨が無くなる病気です。歯とそれを支える骨を守るための歯茎の健康が損ねられた結果です。
 図5は、歯周病が進んだ歯の歯茎の中の状態を示したものです。歯とそれを支える骨を守るための歯茎の健康が損ねられた結果です。歯茎の状態は、身体全体の健康状態を反映しています。勿論、歯茎に接している歯面の細菌の影響もあります。過度のストレスによる歯茎の血行障害やある種の白血球の増加が発病の原因と治癒の障害と考えられます。
 以上虫歯と歯周病の発病に関して記しました。日常を振り返って健康的な生活を考えるきっかけにしていただけたらと思います。

引用文献 熊谷 崇他 健康志向の診療室づくり 永末書店

 

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