5月31日は、世界禁煙デー
世界保健機構(WHO)の呼びかけによる世界禁煙デーを今年も5月31日にむかえます。厚生労働省は、世界禁煙デーに始まる1週間を「禁煙週間」と定めています。
昨年の5月に健康増進法が施行され、他人のタバコの煙を吸わされる受動喫煙の防止が強化され、駅での喫煙灰皿などの撤去や、喫煙コーナーの設置による分煙などが進められています。今年は、10月から順次、電車・バスなどでのタバコ広告が禁止されることや、11月からは、タバコの外箱の健康被害の警告表示もより大きく・具体的になる予定で、タバコ普及の防止は進んでいます。一方、ある調査では、健康増進法で飲食店などの管理者にも受動喫煙の防止対策を講じる努力義務が定められて、管理者の責任が明確にされているにもかかわらず、8割以上のお店が何ら禁煙や分煙などの対策を取っていないことも判明しており、国際的には日本はタバコに甘い国と非難されています。
タバコの煙には、4000種類以上の化学物質
タバコの煙の成分としては、ニコチン、タール、一酸化炭素がその代表的なものですが、タールの中にはベンツピレンなど多くの発ガン物質や、いろいろなものが含有されており、煙の中には判っているだけでも4000種類以上の化学物質が含まれていると云われています。これらの化学物質が、いろんな作用を及ぼします。
ニコチンは、中枢神経を興奮させ、心臓に対しては心拍数などを増加させ、血管に対しては血管収縮をもたらして血圧を上昇させるなどの作用があり、心筋梗塞になりやすく喫煙者における心筋梗塞はタバコを吸わない人の1・7倍になると云われています。また、依存性があります。
タールは、多くの発ガン性物質を含んでおり、まず肺がんが思いあがりますが、その死亡率はタバコを吸わない人の約4・1倍と云われており、咽頭がんの死亡率は肺がん以上に高く非喫煙者の約20倍に達しており、口腔、食道、胃、すい臓、子宮、肝臓などもリスクが高いといわれています。
一酸化炭素は、血液中の酸素の運搬役であるヘモグロビンとの結合力が、酸素より200倍以上あるといわれており、ヘモグロビンを「横取り」してしまい、体内の酸欠状態をもたらし動脈硬化その他の引き金となります。
タバコと薬の飲み合わせ
タバコの煙の成分は、薬とも飲み合わせ(相互作用)をおこします。
薬は、血液の流れにのって効果をあらわし、役目の終わった薬は肝臓で処理されます。これを代謝といいますが、タバコの煙の成分は肝臓での薬の処理に関与する酵素を活性化して、タバコを吸っていない人よりも早く薬を分解してしまいます。このため、一般的には薬の効きめを弱めたり、効きめの持続時間を短くしたりするといわれていています。喘息の薬であるテオフィリンは、喫煙者はタバコを吸わない人の1・2〜1・4倍使わないと同じ効果にならないといわれ、解熱鎮痛薬のアセトアミノフェン、降圧薬のプロプラノール、精神安定剤のジアゼパム、などにも影響します。
この代謝への影響以外にも、ニコチンが末梢血管を収縮することによりインシュリンの皮下からの吸収を減少しヘビースモーカーの1型糖尿病で、タバコを吸わない人より15〜30%インシュリンの使用量を増加させないとタバコを吸わない人と同じ効果をあらわさないことや、経口避妊薬では喫煙により心筋梗塞などのリスクが増大することから、35歳以上で1日15本以上の喫煙者は使用しない事とされているなど、多くの薬が喫煙により影響をうけます。
治療で薬が必要なとき、タバコがそれを台無しにしているかもわかりませんので、その上からも禁煙をおすすめします。
禁煙は徐々に
現在、喫煙者で薬を使っている人が、急に禁煙した場合、いままでの量でコントーロールされていたものが、薬が効きすぎ副作用が出る場合もありますので、禁煙する場合は様子を見ながら徐々に禁煙していく必要があります。禁煙の手助けとして、医療用として貼付剤のニコチンパッチ(ニコチネルTTS)や市販品としてニコチンガム(ニコレット)がありますので、ご相談ください。
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