医師の研修を地域・職員の共同で成功させよう
4月より2名の研修医を迎え、新制度でスタート

今年度から医師の卒後臨床研修が制度化されます。大田病院は厚生労働省の指定を受けて、4月より2名の研修医を受け入れることになりました。新たなプログラムには城南保健生協の班会も位置づけられるそうです。そこで新しい研修制度について組合員にもわかるようにお話して頂こうと研修委員長の伊達純先生を編集委員が伺いました。

編集部:今までは医師の研修制度はなかったのですが?
伊達先生:昭和40年代中盤まではインタ−ン制度がありました。制度とは言っても決められらたプログラムがあるわけでなく、いわゆる徒弟制度で給料も無いのが実態でした。その後東大闘争に端を発したインタ−ン制度廃止の運動が盛り上がりインタ−ン制度そのものが廃止となり、努力目標として2年間研修するのが望ましいという自由研修制度に変わりました。今度36年ぶりに卒後トレーニングとして制度化されたのです。

臨床検討会

編集部:ではインタ−ン制度廃止以降は卒業後、すぐに医者としてやっていたのですか?
伊達:学生の約8割はそのまま大学に残るのでインタ−ンとあまり変わりませんでした。大田病院も加盟している民医連では昭和40年代後半から独自の研修活動を始めました。大田病院も地域の人に質の良い医療を提供出来るようにと医学生を迎え入れ、卒後研修がすすめられてきました。現在の城南法人の常勤医師は大田病院で研修をはじめた医師が大部分を占めています。この地域で医療を継続していくには独自のカリキュラムで研修した医師が地域に根付いて医療活動を行っていくことが必須条件になるのです。

太田病院が厚生労働省の指定を受けられた要因は?

編集部:大田病院は決して規模は大きくないのに、指定がとれた要因は何だったのでしょうか?
伊達:これまでの研修指定病院の条件は、総合病院であること、300床以上あること等々いくつかの条件がありました。しかし私たちは地域医療の第一線での臨床研修を、独自のプログラムで自前の医師を養成してきました。大病院でなくても医師の研修が出来ることを大田病院も含む全国の民医連の病院の奮闘によって実証してきたわけです。最近はプライマリーケア重視、地域の保健予防重視の観点からも病院の規模やベッド数を基準にするのではなく、カリキュラムの内容で認定されるようになったのです。
編集部:研修医はどのようにして決まるのですか?
伊達:マッチングプログラムと言って、病院と医学生のお見合いのようなものですが、それによって決まるのです。ですから大田病院はどんな医師を養成しようとしているのか、明確なビジョンが必要ですし、そのためにはどんなプログラムが用意されているのかが問われています。
編集部:研修医の身分や処遇はどのようになるのですか?
伊達:民医連の病院では以前から研修医も常勤扱いで給与の保障もされていました。長く働き続けるためにも、妥当な勤務拘束時間・休日が保障されるように改善していく必要があります。研修医は自分たちの研修を改善していく権利があり、そのために発言する機会と行動する自由を持っています。円滑に充実した研修が行えるように、研修医のみで運営する研修医会を保障しています。

組合員さんと一緒の班会の運営なども…

早朝勉強会の風景

編集部:生協の班会も研修カリキュラムに位置づけられるそうですが
伊達:以前研修委員会で研修医から「初年度から大田病院の医療について組合員さんと班会で話が出来たらよかった。そこでもっと学びたかった」といった感想がだされました。これまでも大田病院に入職を決意する医師は地域医療をやりたい、生活者の視点で患者さんと接したいという要望はありましたが、初期研修のなかで、そのことを位置づけることができませんでした。
確かに研修医には獲得しなければならない技術がたくさんありますが、深い社会認識と豊かな人権意識を持つ医師を養成するためには、避けては通れない課題です。班会に健康指導に呼ばれて行くだけではなく、組合員さんと一緒に班の運営にも関わっていく。その中で現在の医療・福祉・介護のあり方に対する思いを共感的に理解することが出来るのではないでしょうか。
さいわい城南保健生協には、「ゆたかの家」という高齢者のつどいの場を運営して、地域の医療・福祉・介護のネットワークづくりの運動も進んでいます。そんな場面にも参加していきたいと思います。
編集部:城南保健生協も職員と一緒になって医師養成に取り組むことが、結果的には患者さんや組合員、地域住民の立場に立った医師を作り出すことになるのですね。私たちも研修医が活躍できるようなフィールドをたくさん持つことが求められていることがよくわかりました。本日はお忙しいところありがとうございました。

保健生協は医師養成に必須の場です。
大田病院内科 中泉聡志

今回、医師研修において医師としての技術研修に加えて、地域研修というものをもう一つの柱と考えています。具体的には、1年目研修医に地域の生協班会の班員になってもらい、年間を通じて、他の班員の方と一緒に活動を行います。そして、研修の最後に報告会を行い、1年間で学んだことや来年度に向けた課題の提起を行ってもらいます。この報告会は地域の方も招き、感謝の気持ちも込めて研修医自らが開催することとなっています。
このような研修を提案した理由は、東京民医連の初期研修プログラムに民医連運動の理解という項目があります。これは“民医連医師”として民医連のことを知ることはもちろん、地域の医療要求、協同組織の役割を理解したり、日常診療の中で共同の営みの医療実践、生活と労働の視点からの患者把握などです。さらにこの研修を通じて、患者さんに寄り添い、あたたかい医療が実践できる大田病院の一職員としての基本姿勢を育むことを目指しています。これらのことは先輩医師から学ぶとともに、患者さんや地域の方から多くのことを学べると実感しているからです。
地域の方と医師=患者関係を離れたところで「どのような医師・医療機関になってもらいたいか」ともに語り合うことは研修医の成長にとって大変有意義であると考えています。また、双方向のコミュニケーションを大切にすることにより、共同組織の人たちにとっても「自分たちの病院」の研修医の養成に積極的に参加してもらい、共同組織の人たちとの絆がより強固なものになり、地域社会の活性化につながることを期待しています。

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