高脂血症について
大田病院 内科 高橋 晃

写真なんの症状もない高脂血症
 高脂血症とは、血液中のコレステロールの値が高くなる病気です。なんの症状もありません。では、なぜこれが病気になるかというと、動脈硬化の原因になるからです。年令を重ねると、だんだん血管の内腔が狭くなってつまりやすくなります。コレステロールのうち、LDL-コレステロールとよばれる悪玉コレステロールが血管の壁にくっついて動脈硬化をすすめるのです。動脈硬化の結果、血管がつまってしまうと、心筋梗塞や脳梗塞といった病気が発症するのです。(図1 動脈硬化の図)

 
図1 コレステロールと動脈硬化
LDLコレステロールが血管の内壁に付着してプラークが形成されます。さらに進行してプラークが破裂すると、血が固まって血栓が形成され、血管がつまってしまいます。
 

全体の死因の35%は動脈硬化が原因
 2001年の厚生省の統計によれば、日本人の死因は上から、癌などの悪性新生物、心疾患、脳血管疾患となっています。このうち、心疾患と脳血管疾患で全体の死因の35%を占めます。いずれも動脈硬化が原因でおこる病気です。動脈硬化を防ぎ、健康な体を維持するために高脂血症の治療が必要なのです。総コレステロールの値が高くなるにつれて、狭心症、心筋梗塞になる確率が上昇します。総コレステロールが220mg/dl未満の人に比べてた場合、狭心症・心筋梗塞になる確率は220mg/dl〜239mg/dlの人では、約1.5倍、240mg/dl〜259mg/dlの人では約2倍、300mg/dl以上の人では約4倍にもなることがわかっています。コレステロールの値と心臓病などのなりやすさの関係を調査して、病気とするコレステロールの値を示したのが高脂血症の診断基準です。(表1)

表1 高脂血症の診断基準(血清脂質値:空腹時採血)
高コレステロール血症 総コレステロール ≧220mg/dl
高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール ≧140mg/dl
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール < 40mg/dl
高トリグリセリド血症 トリグリセリド ≧150mg/dl

 高脂血症の治療では、コレステロールの値を下げることが重要なことはいうまでもありません。もっと重要なことは治療の目的をしっかり認識することです。先にもお話ししたように、高脂血症を治療するのは、動脈硬化の進行を抑えるためです。動脈硬化をすすめる原因(危険因子)は、高脂血症の他にもいくつかあります。自分の力ではどうしようもない原因(不変因子)、自分の力でなんとかすることのできる原因(可変因子)に分けて記しますと次のようになります。

治療の基本は生活習慣の改善を
 ◎不変因子;加齢(男性;45才以上、女性;閉経後)、性別(男性)、遺伝
 ◎可変因子;高血圧症、高脂血症、耐糖能異常、肥満、喫煙、運動不足、ストレス
 動脈硬化の進行を抑えるためには、可変因子を総合的に改善していくことが大切で
す。その作戦の1つが高脂血症のコントロールなのです。ですから、喫煙習慣を続けたままで高脂血症の治療を続けるというのはあまりおすすめできません。風呂の栓を抜いたままで水を入れているようなものです。コレステロールの値(数字)だけでなく、ご自身がかかえている動脈硬化の危険因子に注意を払って、その上で治療戦略をてていくことが大切です。治療の基本は、生活習慣の改善です。そして、それを継続することです。高脂血症はかぜや骨折と違い、すっかり治ってしまっておしまいという病気ではありません。治療によって改善しても、やめてしまうとすぐもとに戻ってしまいます。

食事療法と運動療法
 食事療法は、自己流でなく栄養士の指導の元にしっかり取り組むと効果があります。毎日の食事の問題点は自分では気がつきにくいものです。実際の献立を栄養士にみてもらい、その助言のもとに取り組むといいでしょう。運動療法といっても激しい運動を行う必要はありません。1日3km程度のウオーキングを毎日続けると効果があります。中性脂肪が低下し、HDL-コレステロール(善玉コレステロール)が増加する他、血圧を下げたり、血糖を下げたりすする効果やストレス解消といった効果も期待できます。お金もかからず、副作用もありませんからお薦めです。ただし、運動のしすぎで体を痛めることになっては本末転倒です。運動の種類、量については事前に医師とご相談下さい。食事・運動療法で十分な改善が得られない場合、薬物療法が必要になります。前にも申し上げたように、高脂血症はすっかり治ってしまうことはありません。薬も中断せずに続けることが大切です。高脂血症は成人になってから見つかる場合が多いのですが、稀に子供の頃からコレステロールがとても高い方がいらっしゃいます。家族性高脂血症という病気です。家系の人がみんな高脂血症であるとか、親類で若くして心臓の病気で亡くなった人が多いという方は要注意です。この場合、特別な治療が必要となりますから、医療スタッフにご相談下さい。

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