大森中診療所 相談室コーナーより

多い粉塵職場の労働者―職歴の把握を
 四月二七日、最高裁は筑豊じん肺訴訟について国と日鉄鉱業(注:被告加害企業)の上告を棄却する判決を言い渡しました。原審の福岡高裁での、国のじん肺加害責任を明確に認め、被告企業の時効援用は権利の濫用であるとの判決内容が、ここに確定したこととなります。
 国がじん肺発生の加害者であり、安全監督権限の不行使を断罪されたのはわが国初めてのことです。しかし今日に至るまでには一八年の歳月がかかりました。その間に原告169名のうち一四四名が塗炭の苦しみの中で死亡しました。じん肺は悲惨な不治の病であり、最古にしてかつ現在に至るも最大の職業病なのです。
 実は、患者さんの職歴を詳しく聞くと、過去にアスベストを含め粉塵職場に就労した方がかなり多いのです。炭鉱、金属鉱山はもとより建設関係、造船、溶接業、隋道工事、産廃業などなどです。そして暴露から一〇年から三〇年の経過を経てじん肺症が発症します。
 以前、大田病院にいらした工藤翔二先生(現在東京医科大学教授)も委員の一人になっていた厚生労働省の「じん肺に合併する肺がんの健康管理に関する専門検討会」は、肺がん(原発性)をじん肺の合併症に加えました。すなわち管理区分U以上のじん肺有所見者の肺がんは労災として認定するということです。じん肺の有所見者で肺がんで亡くなられた方、あるいは肺がんに罹患の方の補償面での救済につながることになります。この面での掘り起こし作業がいくつかの民医連院所で取り組まれています。改めてカルテ上での職歴把握の必要性が浮かび上がります。(保健生協大森中診療所相談コーナー担当 色部 祐)

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