インフルエンザの予防について

大田病院医師 細田 悟

インフルエンザと通常のかぜの違い

通常のかぜと比べ、症状が重く、全身症状も顕著に現れます。そのため高齢者がかかると肺炎を併発したり、持病を悪化させたりして重篤になり、最悪の場合は死に至ることもあります。インフルエンザは潜伏期間が短く、毎年12月下旬から3月上旬にかけて流行します。
インフルエンザと通常のかぜの違いを表に示しますので、参考にして下さい。

写真 インフルエンザと通常のかぜの違い

  通常のかぜ インフルエンザ
原因 ・ラノウィルスなどのウィルス
・クラミジア
・マイコプラズマ
・細菌
・寒冷刺激
・インフルエンザウィルス
感染力 感染力は弱く、ウィルスは徐々に増える 感染力が強く、ウィルスが気管の粘膜で急激に増加する
主な症状 ・のどの痛み
・鼻がムズムズする
・水のような鼻水
・くしゃみや咳
・腰痛
・38度以上の発熱
・頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状
・鼻水
・のどや胸の痛み
・下痢や腹痛
流行 徐々に感染が広がっていく 短期間に膨大な数の人に感染する
死亡率 ほとんど変化なし 65歳以上の高齢者の死亡率が普段より高くなる
その他
の特徴
発熱もあるがインフルエンザほど高くなく、重症化することはめったにない ・肺炎などを併発し、重症化することが多い
・短期間に小児から高齢者まで感染が広がる
・65歳以上の高齢者での死亡率が高まる。

 

インフルエンザの予防接種を受けましょう

〜予防接種には当たりはずれがあるのは本当?〜
10年前までは確かに流行株と一致せずあまり効果がない・・・外れるということはありました。そのせいで予防接種をしなくなった時期がありました。しかし最近、特にこの5年以後は予測技術は格段に上がり、現在のワクチンは少なくとも3種類の流行予測株の混合なのでほとんどはずれることはなくなりました。
インフルエンザの予防接種は1回の接種で免疫獲得率70〜80%で、さらにもう1回行うと90%になると言われていますが通常は1回でよいと言われています。とくに高齢者や持病を持っている人は特に予防接種を行ってください。

日常生活で気をつけること

人ごみを避ける、外出時マスクをつける、室内の湿度を保つ、体力を保つ、などが一般的に言われていますが、日常生活でどうしても人ごみの中で仕事をしたり、様々な活動を行うわけですし、いつもマスクをつけているわけにもいきません。そこで皆さんに心がけて欲しいのが外出後のうがいと手洗いです。
人間の体で一番汚れているのは、実は手のひらなのです。たくさんの細菌やウイルスが付着していると思ってください。インフルエンザに限らず、手洗いはとても大切な予防活動なのです。流水で手首から上あたりから洗いましょう。
話しはそれますが、最近の医療では耐性菌(抗生物質をくり返し使うと、細菌の中には抵抗力がつき、それまでの抗生物質が効かなくなるものも出てきます。これを薬剤耐性菌といいます。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が代表例です。これらは健康な人には影響はありませんが、病院内で体力が弱っている人などの間に次々と感染し、敗血症をひきおこし死に至ることもあります。厚生労働省の調査で、抗生物質を使いすぎないような仕組みを設けている病院が15.3パーセントしかないことがわかりました。)の問題もあり、害のある菌をゼロにする(殺菌)のではなく菌を少なくして発症を防ぐという考え方があります。実際膀胱のなかには常に大腸菌など細菌がいたとしても、その数がその数が少なければ、ほとんど悪さはしません。一般に10の6乗個以上(100万個以上)になったとき、症状が現れます。ある研究では1回のうがいでのどの細菌を10の1乗個づつ減らしてくれると言われています。3回つづけてうがいをすれば、10の3乗個、菌の数を減らしてくれます。

インフルエンザにかかったら

こまめにうがいや手洗いをしていても、体力の低下などでインフルエンザにかかることはあります。もしインフルエンザにかかってしまったらどのような対処のしかたがあるでしょうか。
第一に対症療法です。インフルエンザによっておこる、諸症状に対して薬剤を投与するのが一般的です。発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などに解熱鎮痛剤、鼻汁、くしゃみに抗ヒスタミン剤、咳、痰に鎮去痰剤が用いられます。これらの症状は身体からインフルエンザウイルスを追い出し治そうとする、身体の自然な反応ですので、薬で無理に抑えてしまうとかえって治りが遅くなってしまうこともあります。自己判断で薬は服用せず、受診してください。なお抗生物質は細菌に対して効果を発揮する薬です。合併症の肺炎を引き起こしている方や、高齢者で肺炎を引き起こす可能性の高い方に予防的に使用する以外には、インフルエンザの治療では抗生物質は使用しません。

化学療法について

現在2種類の抗ウイルス薬が保険適応になっています。いずれも感染初期(48時間以内)に服用すると治りがはやくなります。しかし発症期間が7日間であればそれを5日間程度にするという程度の効果なので、あまり大きな期待はできません。やはりインフルエンザワクチンの予防接種を受けることが、現状では一番有効です。
昨年から65歳以上の高齢者に対して公費で一部負担する制度ができました。このことはまだ一般に知られていないようですが、積極的に活用してください。城南法人の病院・診療所でインフルエンザの予防接種は可能ですが、予約手続き等、若干の違いがありますので表にまとめておきます。

インフルエンザワクチン接種の
城南法人各院所の対応状況

インフルエンザワクチン接種の城南法人各院所の対応状況
院所名 備考
うのき診療所 13歳未満は2回打ち
京浜診療所 13歳未満は2回打ち13歳未満は須藤医師の診療日
大森診療所 予約を推奨
ゆたか病院 13歳未満は2回打ち
三ツ木診療所 13歳未満は2回打ち未就学児は須藤医師の診療日(土曜午前)

予約は不要、窓口・電話にて対応

 

 

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