腹八分

 東京都には技術の向上を目的とすると共に、就職への門戸を広げるための「技術専門校」が幾つかあります。明日の技術者を育てる機関でもあります。歴史はけっこう古く、日本の高度経済成長に合わせて隆盛を程した時もありました。かつての修了生たちのうちの大半は学校で学んだ技術を活かして就職してゆき、やがて就職先の職場で技術の中枢を担っていきました。城南の地域には高い技術を持った工場が現在でも密集していますが、その工場の中には、かつて訓練校と呼ばれていた時代の技術校出身者が数多くいます。

 訓練校当時も技術専門校と名前も変えても、学校の目的は変わっていません。ただ時代を反映して、年齢層が高くなってきています。リストラによる離職が増大して、新しい技術を身につけようとしている人が増えてきたためです。

 技術とは、やはり物づくりの基本のことです。かつては本当に手仕事が基本でした。今だって基本は手仕事です。しかし現在では基本を会得しないままに、コンピュータの操作に移行してしまいます。受け入れ側の企業の要請でもあります。すぐに戦力になる人材を求めているのです。かつての城南の物づくりの職人たちが持っていた、見て、さわって確かめる時代からコンピュータの管理が物づくりの基本になってしまったのです。品物は生産できても、コンピュータは自らをきたえ、深めることはできません。技術とは人間が長い年月をかけて熟成させてゆくものです。技術専門学校出身者の離職率は現在ずい分高くなっています。企業の要請する促成栽培に対する、抵抗でもあります。

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