スポーツしてみませんか
〜大田病院Team MEDの活動をとおして〜
大田病院外科 田村直

権守先生に誘われて出場した駅伝大会で・・・
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 残暑も峠を越えたと思ったら、お彼岸を過ぎる前にすっかり秋らしいさわやかな気候になってきました。「スポーツの秋」の特集として今月はスポーツのお話をしたいと思います。中学・高校とクラブ活動は卓球をやっていました。トレーニングではよく走らされました。走るのは苦手ではなかったのですが、楽しんで走るというようなものではありませんでした。大学を出て大田病院に就職してからの三年間はほとんどスポーツと縁のない生活を送っていました。(時々テニスやスキーはやっていましたが)体重は卒業後五kgを増え、日焼けする機会もあまりなくなってしまいました。八七年春、権守医師(現ゆたか病院院長)に誘われて多摩川の河原で行われる駅伝大会に出ました。5kmの区間を担当しましたが、学生時代の感覚でまぁ5kmなら軽いだろうと思って走り出したらびっくり。苦しいのなんのって。もうよれよれになってやっとの思いでたタスキをつなぎました。28歳の時です。こんなはずじゃないと思いました。次の日からタバコをやめて通勤を中心に走り始めました。目標は権守医師に追いつくこと。結局、この目標に到達するのに1年かかりました。

通勤という日常生活をトレーニングの場に。
そしてサロマ湖100kmマラソンに出場

 大田病院のジョギングの歴史は以外に古く、日本で普及する10年くらい前、村岡医師(現大田病院院長)がアメリカではゆっくり走るのを楽しんでいるらしいという話しを聞いて権守医師と通勤時間を利用して走ったのが始まりです。大田病院ランナーズという集まりもあって時々駅伝レースに参加していたそうです。(大森中診療所の澤浦所長も走っていました。昔)。そういった職場の環境もあって通勤ランを続けやすかったことはあります。レースを目指してトレーニングすることが学生時代の感覚をよみがえらせてくれました。この頃のトレーニングは理屈もなにもありません。家を出る時間によって余裕があるときと必死で走らなければ間に合わない時といろいろでした。ただ練習量(1ヶ月の走行距離)が増えるに従って記録はよくなっていきました。87年12月記念すべき初フルマラソン(42.195km)完走。苦しかったけど仕事では感じられない種類の達成感がありました。速く走ることとは違った世界。長い距離を走る面白さは88年のサロマ湖100kmマラソンにつながりました。これまでの人生で100kmという距離を走るなんてクレイジーなことは思いもよらなかった事です。サロマのゴールにたどりついた時、なんだかいろいろな価値観が変わった気がしました。そしてトライアスロンとの出会いがありました。伊豆大島、佐渡、宮古島、そのほか東北の小さな町のレース。トライアスロンでなければ訪れることがなかった土地とそこに暮らす人たちとの出会いがありました。大田病院ランナーズはジョギング、トライアスロン、登山を楽しむTeamMEDというクラブに発展しました。94年にはかすみがうらマラソンで最初で(おそらく)最後のサブスリー(フルマラソンを3時間以内で走ること)。しかし記録は少しずつ落ちていき、最近は中山道(江戸時代の旧道が85%くらい残っています)をみんなで走ることに新しい面白さを感じているところです。

楽しく走るコツ。「乳酸を貯めずに脂肪を燃やす。」
有酸素運動(エアロビック)のすすめ。

 走ることで体のことに興味も沸いてきました。最初に注目したのは、故佐々木功監督(NEC)の「ゆっくり走れば速くなる」でした。歩くよりもゆっくり走ることは実はけっこう難しく、特に初心者はハーハーゼーゼー走らないと走った気がしなかったりします。LSD(Long Slow Distanse)との出会いでした。このとき初めて有酸素運動と無酸素運動の違いを意識するようになりました。運動をすると筋肉は蓄えられたグリコーゲンを燃料にしますが、これには限りがあって長時間動けません。最大のエネルギー原は脂肪です。しかし脂肪が燃えてエネルギーになるためには少し時間がかかります。マラソンやトライアスロンなどの長時間の耐久レースには筋肉に疲労物質である乳酸を貯めずに大量に蓄えられた脂肪をエネルギー源にして運動を続けることが必要です。その目安がLT(Lactate Threshold乳酸性作業域値)です。この運動強度以下であれば脂肪を燃料にして(脂肪1kgで150km走れます)筋肉に乳酸を貯めることなく運動し続けられます。これを有酸素運動といいます。逆にこれを超えると筋肉に乳酸が貯まって動けなくなります。これが無酸素運動です(図1)。この境界を心拍数という身近な指標でトレーニングに取り入れたものに「マフェトン理論」があります。持久系競技のトレーニングをすべてエアロビック(有酸素運動)で行うというもので、さっそく心拍計(胸につけたセンサーから腕時計型のモニターに心拍数を表示する)を買って試しました(表1、表2、グラフ1)。心拍数を意識するようになって自分の体の「声」を意識するようになりました。朝起きたときの心拍数によってその日の調子がわかります。僕の場合、安静時心拍数45/分くらい。例えば二日酔いだったりすると朝起きたとき60/分を超えていたりします。心拍数を目安にその日のトレーニングのペースを調節するのはいい方法だと思いました。

     図1 表1
表2 グラフ1

心拍数を目安にした無理のないトレーニングを。
 しかし年には勝てない部分もあります。一般に運動能力は20代をピークに下降線をたどります。それでもトレーニングをすることによって、落ち具合を支えることはできます。心拍数を目安にした無理の無いトレーニングを思い立った時に始めてはいかがでしょうか(図2)。また驚いたことに高齢者であってもトレーニングによる筋力強化が期待できます。図3は60〜72歳の男性に1RM(1回行える最大筋力)の80%のトレーニングと40%のトレーニングを行ったときのデータです。専門のトレーナーや理学療法士の指導でメニューを組んでもらうといいのではないかと思います。走るだけでなく、野山を歩くことも気持ちのいい季節になりました。ひとりでも多くの人にいつまでもスポーツを楽しんでいただきたいと思います。

図2 図3

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